「ジソウのお仕事」

コラム

  「ジソウのお仕事」からの学びに

誰しも、大事な場にお守りのようなものを手にしていく。私の場合にそれは、見ることもないと分かっているにも拘わらず手にするファイルだったり、読み込んで、ラインマーカーだらけの書籍だったりする。
 だから、いろいろな視察や意見交換の折に、先方の方の持っているファイル、それ以上に手にしている書籍はとても気になるものの一つでもある。先日、福井総合児童相談所を訪問した折に、同席されていた職員の方が手にされていたのが「ジソウのお仕事」という書籍。気に掛かかって、終わった後で書籍名をお聞きし、先日購入した。その道に携わっている方がその場に持参したというだけでも、私にとっては必読書となってしまうわけだが、この本の内容は、私にとって、強烈なインパクトを与えるに十分足るものだった。
教育現場いた者にとって、児相は近くて遠い場でもあり、「どうして?」とイライラすることも少なくはなかった。荒れを目にし、それを支えきれずに苦しむ保護者や家庭に出会い、このタイミングでクールダウンできれば、この子にとって絶対にプラスだと考え、いろいろと相談の場や依頼をしたが叶わなかった経験は少なくない。一時保護という言葉は「死語」に近い思いすらあった。
しかし、現場は私たちの想像以上のものであることが書籍から伝わってきた。正直言って、私たちの見ている児相は氷山の一角。水面上に現れたほんの一部なのかもしれない。
これまでも保護者に対して、「自分の子でしょ。」と腹立たしさを覚えたことは少なくない。しかし、児相の職員の状況。何よりも一人一人の子どもたちに対する思いは、私たちの域を超えているのを知らしめられた。
親の愛は不滅であり、何ものにも代えられない大きなものなのだと信じつつも、いや、それを信じているからこそ、現実を直視できない大人社会の厳しさに自分の無力さを感じたこともある。しかし、児相の職員はそれを超えた中にある。
「ジソウの仕事」の苦しさを少しでも改善し、一人でも多くの子どもたちの安定・安心した生活を確保していくために、児相を精一杯バックアップしていきたい。

 ジソウのお仕事  著者 青山 さくら
             川松 亮
          出版 株式会社フェミックス