強さと弱さと

雑感

 チリ鉱山落盤事故から70日間を経て救出された33名の姿は、我々に多くのことを教えてくれました。
 生存が確認され、連絡がとれるようになってからの救出劇とそれを待ち耐えた「人の力」「人のつながり」に世界の全ての人が素直に感動を覚えたのはもちろんです。・・・しかし、それにも増して、すごさを感じるのは、生存が外に伝わるまでの17日間を支え合った精神力の強さです。ほとんどが絶望に向かおうとする中で、かすかな可能性を信じて、わずかな食料と水分を計画的に分け合い、いつまで続くかも分からない恐怖と闘い切ったことです。「死を覚悟した」「空気が足りなくて、坑道内を探し回った。」「皆が絶望していた」と作業員が振り返るように、17日間の33名の葛藤を想像するとき、言葉を失います。
・・・ちょうど同じ頃、私たちが耳にしたのは、東京で起こった中学3年生が耳の不自由なホームレスの男性に熱湯をかけたという事件でした。「おもしろかった」「やり過ぎた」という言葉の中に、人の命に対する尊厳は感じられないことに衝撃を感じます。
 これら2つの出来事から見えてくる「人間の強さと弱さ」。どちらも全ての人に潜在しているものである以上、「どんな人に育っていってくれることを願うのか」という私たち大人の「願い」を明確に示していくことが大切なのだと感じます。