平成28年という新しい年に

思い

新しい年、気持ちも新たに、「さあ頑張るぞ! いい年にするぞ!」と、新しいモチベーションを自分の中に感じます。

安部首相の年頭記者会見の中で、耳にしたのは「地方創生は進んでいる。」「雇用も進んでいる。」という言葉でした。しかし、その実感は私たちにあるのでしょうか? 「経済最優先」「中小企業の力」が大切なのだと言葉を続け、「名目GDP600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職 0」という3つの数字に代表される「新3本の矢」による「一億総活躍社会」は、とても魅力的な言葉です。しかし、私たちは、その本質をしっかりと見抜いていく眼をもたなければなりません。「経済最優先」「小中企業の力」という言葉の裏に「労働者を大切にしつつ、勤労者の生活を高めつつ」という視点はあるのでしょうか? けっして十分ではありません。

その証拠に、昨年度の労使交渉の中、平均2.2%の賃上げ率を確保し、ある程度の評価を得たとしても、賃金アップはまだまだ十分ではありません。消費税率引き上げと輸入価格の値上がりによる物価上昇で実質賃金は5%も減少しているのです。大企業の利益と株価は上がりましたが、賃金は下がっており、経済は成長したとは言えないのです。

昨年、福井県の最低賃金は16円アップの732円に上げられました。しかし、それではまだまだ十分と言えないのは明らかです。特に、労働者の4割と言われる非正規のみなさんの賃金は、まったく生活実態に合わないものとなっています。さらに、多くの場で語られる「労働者派遣法の全面見直し」「解雇の金銭解決制度」「高度プロフェッショナル制度」といった労働法案の姿は、大企業や経営者にとって有利なものになっているのは間違いありません。

大企業と中小企業、正社員と非正社員の格差は厳然として存在しています。

何よりも大切なのは、生活者一人一人が、「生活が安定した」と感じる水準まで、雇用の安定を実現し、賃金を高めることなのだと思います。

先ほどの年頭の言葉の中で安部首相は、徳川吉宗の「桜の苗木」を引用し、「未来への投資」「10年後20年後のアベノミクスの果実」、そのための「一億総活躍社会元年」を掲げ、「挑戦」という言葉を何度も強調しました。「実をつける」という言葉は、先日の渕上市長の念頭の言葉にもありました。「未来への投資」、「将来の実りを見据えた投資」は大切なのです。 しかし、そのためには、豊かな土壌が必要なのはもちろんですが、なによりも、しっかりと根っこを育てなければなりません。根っこを育てるために大切なのは、水の与え方なのだといいます。毎日毎日、丹念に状態を見てやり、丁寧に水をまかねばなりません。果樹を育てる時には、根がどこまで張っているのかを慎重に見極めながら、そのちょっと先のエリアに水をまいてやることで、自分の力で伸びようとして根を張っていくのです。幹に直接、肥料や水を与えたとしても、根は十分に張らないのです。こう考えるとき、大切なのは、どこまで根が張っているのかをしっかりと見定める姿勢と手だてです。

施策において、土壌とは市民のいろいろな活動を支える環境であり、モチベーションであるのは確かです。将来の実りとは、市民が経済的にも文化的にも今よりも豊かさを感じる生活であり、根を張るとは、より高いレベルでの街づくりや文化づくりを市民自らの手で行っていく力をつけていくことなのです。では、水とは何なのでしょう? それは、財政面での支援も含め、施策そのもの。派手さはなくとも、「国民や市民を大切にしている」と実感できる安定した施策なのでしょう。

1月4日の新春市民交流会は、1月とは思えない穏やかなお天気にも恵まれ、和やかな雰囲気でした。敦賀市の将来を担っている方々を前にしての年頭挨拶の中で、渕上市長は、「行政の棚卸し」と「スリム化」を強調しています。今後、それがどのような形で具体化され、市民生活にどのような形になって伝わってくるのかをしっかりと見守り、行動していきます。