「鍛える文化」「群れる力」の光と影

教育

「福井県の学力・体力がトップクラスの秘密」
志水宏吉+前馬優策 編著  より 抜粋

  
著者がこの本を通して福井の教育について述べていることを表現すると、こんなタイトルになるような気がします。
「序章」「1章」「終章」は是非読んでいただければと思います。

「終章」で、指摘されている課題は次のようなものです。

子供の育ちに関する課題

  • 子供たちは、地域・家庭・学校の中で手厚いケアを受けながら育っている。そのことが逆説的に子供たちの「個性」の伸長を阻害しているのではないか。
    「群れる力」の育成は、必ずしも「群れを離れて生きる力」を保証するものではない。言い換えるなら、福井の教育は「一粒揃いの中堅人材」を算出することには長けているが、「卓越した個」を育てきれないのではないかという反省。
  • 不登校率の高さをめぐって
    大阪では、不登校の子供たちを学校に復帰させるためには、まず学校や学級に彼らの「居場所」をつくることが大切であるというアプローチがとられることが多い。それに対して福井の「鍛える」学校文化のもとでは、そこに「ついていけない」子供たちが、徐々に不登校状態に陥っていくだろうことが予想される。福井の学校は、ある意味「道場」である。
    「道場」であるが故に「ついていけない者」が出てくることは避けがたい。
    いつの日か福井の学校文化も抜本的な変容を遂げなければならない日が来るかもしれない。

大人の課題
利点でもあり、同時に弱点でもあるのが、福井の職員室における同質性であろう。「群れ」の縛りが極端に強いという表現をすることも可能なのかもしれない。「他流試合」の機会をどこで保証するのかということである。安定した「群れ」の 中だけで成長していく教師は、おそらく社会や保護者・こどもたちの変化に柔軟に対応できるリーダーにはなりにくいだろう。