実るほど 頭を垂れる 稲穂かな

雑感

 先日の全日中校長大会で、三國清三さんの講演をお聴きしました。
 今や世界的にも有名な料理長なのですが、(先日、図書館で偶然著書を見つけ、同じ日にネスカフェのCMに登場しているのに気づいてびっくりしました・・・)北海道の増毛という小さな漁師町に7人兄弟の三男として生まれ、毎日の食べ物にも事欠く貧乏な生活だったそうです。著書の中には、
 「海が荒れて漁に出られないとき、ぼくは父と一緒に浜に打ち上げられたホヤを拾いに行きました。砂まみれになったそれを海水に洗ってかぶりつく。すると“海のパイナップル”と呼ばれるホヤの甘さ、内臓の苦みと酸っぱさそして塩水のしょっぱさが入り交じった味が口いっぱいに広がっていく。
 そればかりか、ぼくは母の作った野菜を畑でしょっちゅう生でかじり・・・・」とあります。人の味覚には五味「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「うま味」があり、舌の表面にある“味蕾(みらい)”という器官で感じ取っているそうですが、三國さんが最高の料理長と呼ばれるようになったのは、貧しさの中で、12歳がピークといわれる味覚の感覚を知らず知らず研ぎ澄まし、それが「味覚のルーツ」になっていたからだということです。
 そんな彼ですが、フランスに渡り料理界で現在の名声を得るには、貧しさの中で、大変な苦労と努力があったことは想像に難くありません。その大きな励みになったのは折に触れて母親から聞かされた言葉
「お金がなくても学歴がなくても、志は平等なんだよ」
「稲穂のように、実るほど頭を垂れなさい」だったということです。
 心に留めたい言葉です。