まつりの提灯

雑感

 「今年は、まつりの提灯(ちょうちん)出そか?」という母の声に、昔は近所の家の軒下に当然のように提灯が吊されていたことを思い出した。それぞれの家紋と名字が風になびいて揺れる様はなかなかいいものだと子供心に感じていたし、夜に灯りが入った提灯の美しさは祭りの思い出として記憶の片隅に残っている。
 考えてみれば、2年半前に父が逝ってから・・・いや、それ以前に父が寝たきりになってからは、吊されてこなかった提灯だった。ひとしきり探して、吊した。軒下のちょうどいい位置に残っていたヒートンが、妙に大きく見えた。