それでも、人は井戸を掘る 平成25年度 卒業式式辞より

思い

 私たちが、みなさんに伝えなければならないものはたくさんあります。それらをどれだけ伝えられたでしょう。
○『人は一人では生きていけない。』ということを体験できたでしょうか。
○『仲間っていいものだ』『人って捨てたもんじゃない』と感じてくれたでしょうか。
○『何を手に入れたかということ以上に、「そのために何をしてきたか」が大切なのだ』と いうことを分かってもらえたでしょうか。

 みなさんに直接話すのも最後となります。
 義務教育の修了にあたり、そして、皆さんの新たな門出に、私の大好きな『井戸を掘ったら、まずは泥水。』という言葉を再度伝えておきたいと思います。

 これまでの学校生活の中で、皆さんは多くの小さな井戸を掘ってきました。その体験を通して「最初からきれいな水が手に入れることなどできないのだということ」を学んだことでしょう。これからみなさんが掘り始める井戸は、今までのものとは桁違いに大きく深い井戸なのだと思います。その泥水もまたこれまで以上のものに違いありません。
しかし、本当の苦しさは別のところにあります。本当の苦しさは、今掘っている井戸が必ずしも清らかな水につながっているとは限らないところにあるのです。
 ただはっきりしているのは、掘るのを止めてしまっては、それまでの努力が泡と散り、絶対に新鮮な水にたどり着かないということなのです。
 「それでも人は井戸を掘る」のです。それが人なのです。

 その姿を見守り、支えてくれる人がいます。それが家族であり、仲間なのだということを忘れないでください。

 今、「自分だけのシンフォニー」は、次の楽章に進もうとしています。
 井戸を掘り続け、「震災からの復興」が使命である社会に踏み出してくれることを願い、式辞といたします。