2013年1月

目に見えない基本

子どもたちへ

 私の新年の楽しみの一つに「箱根駅伝」があります。
 陸上に詳しい先生方もたくさんおられる中で、駅伝の話をするのは、大変おこがましいのですが、「箱根駅伝」という名前は聞いたことがあると思いますが、正式名称は東京箱根間往復大学駅伝競走(とうきょうはこねかんおうふくだいがくえきでんきょうそう)で、19の大学と+1チームが参加します。
コースは、千代田区大手町から神奈川県芦ノ湖までの往復で、往路108km、復路109.9km、計217.9km。
1月2日に東京から箱根への往路を、1月3日に箱根から東京への復路を走ります。
そんな今年の第89回「箱根駅伝」の総合優勝は、予選会から勝ち上がった日本体育大学でした。その日体大の別府監督が、優勝インタビューの中で「勝因」を尋ねられ、誰もがハードで厳しい陸上の練習を語るものと予測していた中、語られたのは、「ノロウィルスやインフルエンザにかからないよううがい・手洗いを徹底して、ベストコンディションで大会に臨んだことです。」という意外な言葉でした。
実は日体大は、昨年度は、繰り上げスタートにより、タスキが途絶え惨敗しました。
その中で、「箱根駅伝は、『心技体』が大切」と。「練習の量や質が良くても生活態度が悪ければ絶対に勝てない。駅伝はタスキを渡すのではなく、心をつなぐもの」 と考え、別府監督が、昨年の悔しさを払拭し、目指す結果を手にする為に取り組んだのは、目に見えない”基本”を見直すことでした。それは、日々の練習や体調管理・精神管理だけでなく、生活面において、当たり前の事を徹底して行ったそうです。
朝5時半過ぎから生徒と共に練習場の草むしりや掃除を実施。午後10時半の消灯時間も厳守しました。規則正しい生活、規則正しい食事、時間を守る、チームワークの強化、挨拶などの礼節、・・などをはじめ、基本的生活面の引き締めを念頭に、真面目にコツコツと取り組んで来られたという事です。耐えられず辞めていく部員も出ましたが、一切の妥協を排除しました。
 その結果、精神面を鍛えられた選手たちは、力を出し切れる集団に生まれ変わったのです。過去、大会前に主力選手がノロウイルスに集団感染する甘さもあった日体大は、規律を取り戻し、ベストの布陣で今大会に臨んだのです。
それが先ほどの優勝インタビューの言葉だったのです。

 人間は、ついつい、その当たり前の事が、なかなか出来ずに、曖昧に流していってしまいがちです。しかし、目に見えない”基本”が徹底されたとき、そこからあふれ出る自信が大きな力になるものなのだということを教えてくれているような気がします。